経済はもう「武器」になった
── なぜ世界は“自律性”と“不可欠性”を奪い合っているのか
世界は今、静かに戦争の形を変えている。
それはミサイルでも兵士でもなく、サプライチェーンそのものが武器になる戦争だ。
この流れを、JETROの最新分析は、非常に冷静に整理している。

自由貿易の時代は、もう前提ではない
2010年代まで、世界はこう動いていた。
作れる国が作る 安い場所で作る 世界に売る
その前提を支えていたのが、
WTOと、
圧倒的な安全保障提供者としてのアメリカ合衆国だった。
しかしこの前提は、
コロナ ウクライナ戦争 米中対立
によって完全に崩れた。
今や重要なのは、
「安いか」ではなく
「止められないか」「握られていないか」
である。
キーワードは2つ:「自律性」と「不可欠性」
JETROの分析を一言で要約すると、
世界はこの2つを奪い合っている。
戦略的自律性
他国に止められても、自国が生き残れるか
戦略的不可欠性
自国が止まると、世界が困る状態を作れているか
この2つを持たない国は、
交渉の場で常に弱い立場に立たされる。
なぜレアアースが象徴なのか
レアアースは「希少」だから問題なのではない。
精製に膨大なエネルギーが必要 環境負荷が高い 放射性廃棄物が出る
つまり、
「作れるけど、やりたくない」工程
を、中国が一手に引き受けてきた。
その結果、
世界は安さに依存し 中国は交渉カードを得た
だが今、各国はその依存を本気で断ち切ろうとしている。
世界は一斉に「内向き」に動いている
JETROが示すのは、非常に興味深い共通点だ。
各国がやっていることは同じ
重要資源を押さえる 国内生産を増やす 戦略産業を囲い込む
例を挙げると:
アフリカ:原料輸出から加工まで国内で 中東:資源×投資で主導権確保 オーストラリア:採掘〜精製の主権確立 EU:依存遮断の法制度化 日本:15年かけたレアアース分散と備蓄
これは偶然ではない。
経済=安全保障
この前提が、世界共通になっただけだ。
もう「市場に任せる」時代ではない
重要なのはここだ。
原材料は市場で買える
という前提は、もう崩れた
だから企業も国家も、
調達先の多元化 国内回帰 政策・補助金の活用
を戦略として組み込まざるを得ない。
これは「保護主義」ではない。
生存戦略だ。
個人にとって、これは他人事ではない
この構造は、国家だけの話ではない。
スキルが一社・一業界依存 判断を他人やAIに丸投げ 自分が何に不可欠か説明できない
こうした個人は、
**国家と同じく“交渉力ゼロ”**になる。
だから今問われているのは、
自分は
どこで自律していて
何に不可欠なのか
を言語化できるかだ。
まとめ:世界はすでに次のフェーズに入った
経済は武器化した サプライチェーンは戦場になった 自律性と不可欠性が価値を決める
これは国家だけでなく、
企業にも、個人にも同じ構造が当てはまる。
そして、この構造を理解し、
自分の現在地を測るためのフレームこそが——
RISが扱っている領域だ。
